ISOを有効活用するには
この業界でも多くの企業が多額の費用と労力を費やし、ISOの認証を取得しています。
ISOは品質(QMS)や環境(EMS)、そして情報セキュリティ(ISMS)と、この三大マネジメントシステムが印刷業界でも一般的だと思います。
しかしISOの取得が目的になってしまい、経営や普段のお仕事に十分な効果が見出せずに悩んでいる方も多いのでは!?
そのいまいち活用できないISOが、一昨年改定されたISO/IEC 27001:2013年版から、かなり使える!?ようになってきました。
QMSやEMS、ISMSなどを統合しやすくする為に、ISO/IEC専門業務用指針補足指針附属書SL(Annex SL)という、ISOマネジメントシステムの規格全てに適用する共通テキスト・定義が導入されることになったのです。
今までは規格の要求事項だけではなく、同じタイトルでも、箇条番号(章No)がマネジメントシステムごとにバラバラで、統合するのは非常に困難でした。
また普段の仕事をあまり理解していない外部コンサルタントが、その会社の業務プロセスに後付けでISOを無理矢理入れ込んでいるため、ISOの為の文書や会議、また専門人員などが配置されるなど、従業員の方にとっては厄介な存在になっていませんか?
新しい規格では、「事業プロセスにマネジメントシステム要求事項を統合しなさい」、としています。つまり普段の日常業務にISOの要求事項を入れ込みなさいと、はっきりと明文化したのです。
裏を返せば、ISOの為の文書や会議、専門人員の配置などはやっちゃ駄目、と言うことですね。
なので本当にISOが有効活用できれば、ISOは“業務改善ツール”や“経営改善ツール”として使えるようになるでしょう。
ISO/IEC 27001:2013に続き、先月(2015年9月)、ISO 14001:2015と
ISO 9000:2015が改定され、発行されたばかりです。
これで全て出揃いました。
弊社もQMSとISMSを統合し、更に社内の運用マニュアルと統合しているので、マニュアルは一冊のみです。
もっともISO 9000:2015では、品質マニュアルの作成要求は削除されています。
ただISOは原本が英語なので、規格によって共通テキスト部分の翻訳が微妙に異なります。改定前から“objectives”を「目的」と訳したり「目標」と訳したりと、ピッタリと当てはまる日本語がないのか、和訳で苦しんできた経緯があります。JISになった要求事項を読んでも、「これ日本語なの?」と感じてしまうのはそのせいです。
箇条 6.1の「Actions to address risks and opportunities.」と原文には書かれてますが、和訳では「リスク及び機会への取組み」や、「リスク及び機会に対処する活動」など、規格によって翻訳が異なり、いずれにしても意味がよくわからないと思います。
“機会”と言っても“chance”とは違うので、日本語に訳すと“opportunity ”の本来の意味を誤解してしまいます。
箇条 4では“issues”を「課題」と訳していますが、日本語の「課題」とは「解決すべき問題」なので、個人的にはこの単語の翻訳は疑問に思います。素直に「問題」と訳した方がわかりやすかったと思います。日本人は「problem」と「issue」を、「問題」という1つの単語にまとめてしまっているので、この2つの英単語を区別することが難しいのかもしれません。言葉の壁はまだまだ残ってますね。
弊社では運悪く、この改訂版発行の直前(2015年9月15日から18日)に更新審査(統合)をしてしまったため、残念ながらISO 9000は2008年版のままです。マニュアルや社内の運用はISO/FDIS 9001:2015で既に実施しているので、JIS版が発行されたら、年が明けて直ぐにでも移行審査をするつもりです。
複数のマネジメントシステムや社内の業務プロセスと統合されていない会社さんは、是非この機会に統合し、使えるISOに変えてみてはいかがでしょうか。